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                    「そういうわけで第2回は、町に突如やってきた雷神さんこと幡上芽以ちゃんをお招きしました~」
 
                    「芽以です!(背後に雷鳴を轟かせながら)神名は珍魂奇魂甕津雷媛神と申します!」
 
                    「さっそくビカビカゴロゴロ言ってるねぇ。さすが雷神さん」
 
                    「フッ……任せてください。まあ意図せず勝手に鳴ってしまうのですが……」
 
                    「芽以ちゃんはわたしがへっぽこだっていう噂を聞いて、世話を焼きにきてくれた雷神さんなんですよ」
 
                    「しかも自主的にね。いわゆる押しかけ助っ人ってやつだよね」
 
                    「ええ、玉津江の海神の噂を聞き、芽以は思ったのです。そんなことではいけません! と」
 
                    「土地神ならばもっとしっかりしているべきだと思います! ならばこの珍魂奇魂甕津雷媛神が、ひとつ指導してあげましょう! と――!!」
 
                    「ごめんなさいごめんなさいへっぽこ海神でほんとごめんなさいっっ」
 
                    「どう聞いても芽以ちゃん、好きでかなちゃんの世話焼きに来てるんだからいいんじゃないの?」
 
                    「それよりも、このままだと海神さまは延々謝り続けるだけだと思うから、さっさと先に進めるべきでは?」
 
                    「うん、知ってる。ってわけでかなちゃん、いや、海神さん。そんな芽以ちゃんになんか聞いてみて♪」
 
                    「はっはいっありがとうっ、がんばりますっ。せめてそれくらいは……」
 
                    「じゃ、じゃあ、えっと、芽以ちゃんっ」
 
                    「ええ、なんでも聞いてよいですよ! この珍魂奇魂甕津雷媛神が、たちどころに答えて見せましょう!」
 
                    「……どうしてそんな長い神名すらすら言えるの?」
 
                    「そんな質問とは!? しかもとてつもない真顔ですっ」
 
                    「だ、だってだってわたしじゃ無理だよそれぇーってなんかなってぇっ」
 
                    「うん、試しに言ってみよう」
 
                    「う……うじゅのみギャピ!?」
 
                    「即座に舌を!?」
 
                    「あ、ちなみに私たち神様なんで舌噛んだ程度ならわりと無事だよー」
 
                    「ううっ……だ、だからすごいなぁってっ。ね!?」
 
                    「な、なんという説得力ですか……納得せざるを得ません、やりますね瑞宝叶比売命ッッ……」
 
                    「しかしです。芽以といたしましては、むしろあなたがすらすら言えないことに、誇らしさのようなものすら覚えてしまうのですが」
 
                    「え、ど、どういうこと?」
 
                    「芽以の神名は、『希少で霊妙な御霊を有するピカッと光る雷の女神』程度の意味ですが……ちなみにあなた方は」
 
                    「わ、わたしは『神宝を持ってる叶っていう女の子の神』かな?」
 
                    「私はざっくり言えば『向津山の若い山神』くらいの意味だね」
 
                    「明らかに芽以のものが一番長く複雑ッ……つまり芽以が一番、位の高い神である証明のようなものではありませんか!」
 
                    「そのような格の差がある以上、瑞宝叶比売命、あなたが芽以の神名をすらすら言えないのも当然……むしろ無理もないというやつです、フフフフフ!」
 
                    「な、なるほど……!」
 
                    「んー、まあ、その辺は言わせといてあげちゃうけど……」
 
                    「そゆことならおっぱいはかなちゃんが一番だから、えっちゲーム的にはかなちゃんが一番ヒロインとして位が高いよね」
 
                    「なッ……!? そ、そんな格差がっ……!?」
 
                    「おっ、おぱっ、えちえちえちっ……!?」
 
                    「てててっていうかっ! ほんとは山神さんで妹さんっていう神としてもヒロインとしても一番強い感じの水緒里ちゃんがそれ言っちゃっていいの!?」
 
                    「自分から言うことでダメージを最小限に抑えるというタクティクスですが?」
 
                    「依ちゃんそういうのはいいからッ。とにかくそんな感じだよ、芽以ちゃん……!」
 
                    「くうっ、悔しい、くやちいですッ。正直ヒロインとしての位とやらの意味はあまりよく分かりませんが、何故だかとっても悔しいのですッッ……!」
 
                    「……まあでも、芽以ちゃんはその芽以って名前、おにいにつけてもらったっていう強みがあるからね」
 
                    「!! そ、そうですよねっ」
 
                    「ちなみに今のはちょっと凹ませすぎたという罪悪感から来るフォローですが?」
 
                    「依ちゃん、そういうのもいいから」
 
                    「そうですよね、ええ、そうなのですっ。芽以のこの人名は、立貴が心を込めてつけてくれたものなのです~」
 
                    「それはつまり、立貴が芽以に真心を捧げてくれたも同然っ……いやですねいやですね、芽以は困ってしまいます~~っ♪」
 
                    「立貴くんはまじめだし、そうは思わないんじゃないかなぁ……あはは……」
 
                    「とりあえず、雷神の別の呼び方の、『霹靂神(はたたがみ)』と『鳴神(なるかみ)』から取ったって話だったっけ」
 
                    「鳴神の方は読み方変えたりしてね。おにい、凝ってるなぁ……ちなみにかなちゃんだったら、どんなのつけてた?」
 
                    「えっわたし!? えっと……う、うずのみギャピッ!? ううっ……だから……」
 
                    「ぎゃぴちゃん?」
 
                    「まっぴらごめんですよ!? なにかのマスコットキャラですか、芽以は!」
 
                    「それよりもです。『海神が聞く』という趣旨はどこへ行ったのですか、趣旨は」
 
                    「うーん。徹底的に生真面目ちゃんだよね、芽以ちゃん」
 
                    「そうでしたっ。えっと、じゃあ、最後に……」
 
                    「水緒里ちゃんだったら、芽以ちゃんにどんな名前つけてた?」
 
                    「質問、芽以にではないのですか!?」
 
                    「なんか気になってっ」
 
                    「んーまぁ、最初の『うずのみたま』のところ、音読みしたら珍魂(ちんこん)だから、ちん――」
 
                    「水緒里?」
 
                    「はうっ……!(首筋に巫女チョップを受けて崩れ落ちる)」
 
                    「我が社の祭神が失礼いたしました」
 
                    「ものすごーく聞かない方がよかった感っ……! あ、あはは、そんな感じでまた次回~」
 
                    「???」