カミカゼ☆エクスプローラー

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  • 「う~ん……」
    「どうしたんですか、まなみさん」
    「美汐ちゃん、宇佐美先輩、琴羽ちゃん……そして姫川先輩。みんな魅力的すぎて、その差を歴然と感じてしまっているというか……」
    「確かにお嬢様をはじめ、とても素敵な女性たちだとは思いますが……まなみさんも充分に魅力的だと思います。歴然たる差など、私には感じられませんよ」
    「智ちゃん、ありがとう……。でも、全然そんなことないよ。わたしはやっぱり――」
    「そんなことあるわよ、まなみ!」
    「美汐ちゃん!?」
    「お嬢様!?」
    「私の調べでも、現状速瀬慶司がもっとも執着を示している女性という意味では、速瀬まなみ、おまえが一番だ」
    「というわけで、今回は『祐天寺美汐の乙女力育成日記・速瀬まなみ編』をお送りするわ!」
    「コーナー取られた!?」
    「大丈夫よ、今日の主役はあなた自身なんだから」
    「そ、そうかな……」
    「でも、お兄ちゃんがわたしに執着を示してるって言うのは……?」
    「速瀬が『うちの妹はかわいいなぁ』などと目尻をさげて話していたとの証言が複数あるそうよ」
    「ッ!? お、お兄ちゃんが……まなみのこと、かわいいって……」
    「おおおお……おおおおおおおお…………」
    「もっとも、これに関しては『妹として』の愛着である可能性も高い」
    「う、うん、そ、それでいいよまなみは……。元々まなみはお兄ちゃんの妹だし……ふふっ、お兄ちゃんがかわいいって……ふふふふ……」
    「とても幸せそうでなによりですが……まなみさん、速瀬さんに直接そう言われると、『子ども扱いしないで』といって反発しますよね?」
    「そういえばそうね。わたしも見たことがあるわ」
    「だ、だって、実際子ども扱いされたらムカつくじゃん……。歳だって一つしか違わないのにさ」
    「まぁ確かに……。せっかくまなみが一人の女として乙女力の育成に励んでいるというのにね」
    「べっ、別にそれはお兄ちゃんのためとかそういうんじゃなくて!」
    「まなみさん、落ちついてください。お嬢様は速瀬さんのためとはおっしゃっておりません」
    「いや、どう考えても兄のためだろ」
    「ち、ちがっ」
    「ん? では、速瀬慶司以外の男にアピールするためか? 他に好きな男がいるのか? それとも兄以外のいい男を捜しているのか? ん? ん?」
    「お、お兄ちゃん以外の……お、男……?」
    「(うわ、菜緒さんの意地悪がはじまっちゃった……。まなみちゃん、かわいそう……)」
    「(あああ、菜緒さん、完全に楽しんでる……。なんという愉悦の笑み……)」
    「そうだよなぁ、恋い慕う相手が兄というのも馬鹿馬鹿しい。この国のみならず世界の多くの国では兄妹婚など認められては――」
    「う、うるさいうるさいうるさ~~~~いっ!!」
    「別にいいじゃん、兄妹で好きになったって!! 生まれた時からずっと一緒にいる相手なんだよ!? いいところだって悪いところだって全部全部知ってるの!! だったら、好きになっちゃうことだってあるでしょ!? 兄妹だって男と女だもん!! この人いいなって思ったら好きになっちゃうよ!! 結婚がどうのなんて関係ない! 好きなものは好きなんだもん!! そんなのしょうがないじゃん!!」
    「おお…………」
    • 「まなみちゃん……すごい…………」
    「はぁっ……はぁっ……はぁっ……。ふぅ……」
    「という一般論はおいておいて」
    「一般論!?」
    「そ、そうだよ? 別に兄妹でそうなっちゃうことはあるって言っただけで、わたしがそうだなんて言ってないもん」
    「ククク……おまえのそう言うところは、実に好みだぞ、速瀬まなみ」
    「ど、どうも……(な、なんとか誤魔化せたのかな……)」
    「兄妹での恋愛についてのおまえの考え方はわかった。で、おまえが誰のために女を磨こうとしているのかという話に戻るわけだが」
    「って、全然誤魔化せてないし!」
    「にゃお、そこまでよ。これ以上、わたしの親友を追いつめることは許さないわ」
    「ハッ、失礼いたしました、お嬢様」
    「美汐ちゃん……」
    「せっかくコーナー乗っ取ったのに、近濠先輩に全部持っていかれちゃったら、イヤだもんね?」
    「ギクッ!?」
    「まぁいくらコーナーを乗っ取ったとはいえ、この場合にクローズアップされるべきはまなみさんの方になりますが」
    「そ、そうよ。今回はまなみを紹介する回なんだから、そんなことまなみが気にする必要はないの!」
    「にゃお、今さらだけどまなみの詳細データを」
    「はい。――速瀬まなみ、速瀬慶司の妹で、兄の二日後にここ澄之江学園に転入してきました」
    「鉛筆を硬化するというメティスの持ち主ですが、澄之江学園のエージェントを務める汀薫子が兄のメティスパサーとして資質を見抜いた際には発見されなかったため、そこから兄の転入に至るまでの短期間にメティスに目覚めたと考えられます」
    「あ、うん。この本の通りに練習してみたの」
    「へぇ、どんな本かしら? ……『30日マスター 脅威のメティス開花術 あなたも今日からメティスパサー!?』……す、すごく胡散臭いタイトル……」
    「しかし、まなみさんはこれで実際にメティスパサーになられているわけで……。あ、これの監修の方って……」
    「監修・朝比奈洋子。……これ、わたしたちアルゴノートの顧問の朝比奈先生なの?」
    「そうだよ? だからわたし、先生のことは『師匠』って呼んでるの」
    「はぁ……すごいわね……。よくこんなハウツー本で……」
    「速瀬さんのためにメティスまで身につけてしまうなんて……」
    「べ、別にお兄ちゃんのためじゃなくて、たまたま本屋で目についたから買っただけだし! ワゴンで半額だったから!!」
    「やっぱり売れなかったのね……」
    「ええ、続刊を予定していたそうですが、編集部側から待ったがかかったまま放置されていると彼女も嘆いていました」
    「おかしいよねー。ちゃんとやれば、わたしみたいにメティスパサーになれるのに」
    「……いえ、たぶんですが、まなみさんほど気合いを入れてこの本の通りに実践される方がいなかったのではないかと」
    「ま、まぁ……速瀬もメティスパサーだったわけだし、まなみにもそもそも素質があったんでしょうね」
    「妹を溺愛する兄……メティスすら開花させる強い意志を持つ妹……。お嬢様、ともすれば最大のライバルはこの速瀬まなみということにもなりそうですね」
    「だからっ、わたしのメティスとお兄ちゃんは関係ないんだってば!」
    「ハッ……もしかしてこのツンデレな態度こそが、まなみの乙女力の源泉!?」
    「ま……まなみ、ツンデレとかじゃないもんっ!!」
    「あっ、まなみさん!!」
    「ああっ!? まなみちゃん、待ってください!!」
    「お嬢様」
    「ま、まなみ! お待ちなさい!! まなみーっ!!」
    「…………」
    「というわけで、今回の『近濠菜緒の乙女力育成日記』はこれにて」