カミカゼ☆エクスプローラー

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  • 「はぁ……前回はホントに危ないとこだった……。あんな恰好、冗談じゃないっての……」
    「いや、でも……お兄ちゃんがホントにアレで釣り上げられるなら…………ブツブツブツブツ……」
    「あの、まなみさん……?」
    「フィーッシュ!!」
    「うわぁっ!? びっくりしたぁっ!」
    「あ、智ちゃん。――あっ!? き、着ないよ!? 今のは『お兄ちゃんのためなら着てもいいよ(はぁと)』とか、そういうんじゃないからね!?」
    「ご安心を。個人的にまなみさんの協力をしようと思ってきただけです。お嬢様の許可もおりましたので」
    「……ホント? ホントか……智ちゃん、嘘つくのあんまり得意そうじゃないもんね」
    「うう……信頼されているのか、けなされているのか……」
    「ところで、まなみさん。次のターゲットは決まっているんですか?」
    「うん。智ちゃんが来てくれたのはちょうどよかったかも。実はね、今日は美汐ちゃんたちに真っ向から敵対する、あの風紀委員の先輩を探ってみようかと」
    「宇佐美沙織さんをですか? なるほど……。しかし、彼女も一筋縄でいくような人物ではありませんよ?」
    「だから、智ちゃんが来てくれたのがちょうどいいんじゃん。ほら、結構やりあってるんでしょ? なにか情報ないの、情報」
    「宇佐美さんの情報なら彼女のルームメイトである菜緒さんが詳しいですよ? 呼びましょうか」
    「ストーップ!! 近濠先輩はノー! 呼んじゃダメ! 絶対近濠先輩一人が楽しいようにしかならないからっ」
    「……確かに」
    「まぁいいや。とにかく風紀委員室の様子でも覗きにいってみようか」
    「そうですね」
      そして、風紀委員室前――
    「こ、これは……」
    「……どう? いそう? どれどれ、わたしも……」
    「こ、これは……」
    「う~ん……こんな感じかな……」
    「――Trick or treat! ふふーん♪」
    「ちょ、ちょっと待ってね、智ちゃん。情報を整理しよう」
    「宇佐美沙織、3年生。校則違反は許さない、泣く子も黙る恐怖の風紀委員……で、あってるよね?」
    「あってます。それに加えて、学年トップクラスの成績優秀者で、入試では主席合格だったそうです」
    「メティスも、自分の影から黒いウサギのような物体を作りだして命令を実行させるという、大変高度なものを使いますね」
    「……で、これは?」
    「魔女……の恰好なんでしょうか……。ハロウィンですし……」
    「魔女の恰好とかじゃなくて! つか、おかしいじゃん! あのかっこじゃ風紀乱しまくりじゃん!!」
    「そこにいるのは誰!?」
    「しまった!?」
    「……アナタは、速瀬慶司の妹さん……。こんなところでなにを一人で騒いでいるの?」
    「え、一人って……あれ!? 智ちゃんがいない!?」
    • 「智? それって祐天寺一味の景浦智のこと? 速瀬さん、転入早々あんな悪玉トリオとつきあっているんですか?」
    「あ、悪玉トリオって……。そ、それより先輩? そのお召し物はいったい……」
    「あ、こ、これはその……っ! 今度、児童養護施設でハロウィンパーティがあってね、私たち澄之江学園風紀委員会もそれに協力することになったので、その時に着る仮装の……」
    「着る仮装って……その……下着?」
    「い、一応水着ですからっっ! ほら、生地に触ってみればわかると思いますけど……!」
    「き、生地の部分……? では、失礼して……ごくっ……」
    「にゃぁっ!? あ、ちょ……んんっ!!」
    「わわ、先輩のここ、どんどんコリコリに……」
    「やぁ……だ、だめ……。――って、なにをするんですかーーっっ!!」
    「あたっ! ……あたた……だ、だって、生地の部分が少なすぎて」
    「っていうか、いくら仮装でもこんなの露出高すぎですよ!! そんな施設でこんなカッコしちゃダメです!」
    「だって魔女だから仕方ないです! 魔女といえば、黒い三角帽子と黒いマント、それにお供の黒い猫! ほらっ!」
    「ほらっ、じゃなくて!! 常識ってものを考えてください!!」
    「──!? そ、それは……黒い猫が黒いウサギになってしまったのは認めますが……これは仕方のないことで……」
    「そこじゃない!! ハレンチだって言ってんの! ハレンチだって言ってんの! ハレンチだって言ってんの! よっしゃ、まなみ三回言ってやった!」
    「ふっ……私が扮しているのは魔女なんですから、それをハレンチなどと言われても……」
    「は、鼻で笑われた……。風紀を乱してる風紀委員に鼻で……」
    「風紀を乱してなんかいません! 速瀬さんとはまず魔女の定義から話しあう必要がありそうですね」
    「コホン……いいですか? そもそもハロウィンの仮装で言うところの魔女とは、現在で言うWitchcraftやWiccaではなく、古代ケルトの伝承における妖精などと同列の存在として語られる魔女のことです」
    「実際には15世紀から17世紀にかけての魔女狩りにおいてこれらのイメージが固められていくことになるのだけど、そもそも通俗の――」
    「あ、あの……そんな話は特に……」
    「……このように、なかなか頭の固い方でお嬢様もほとほと手を焼かれているんですよ」
    「智ちゃん、いたの?」
    「私といては、宇佐美さんにいい印象を与えないだろうと思って隠れていました」
    「うん、まぁ、ありがとう……。でもそういうことはあらかじめ言っておいてね」
    「申し訳ありません」
    「ちゃんと話を聞いてください、速瀬まなみさん! そもそも、ハロウィンで仮装されるものは死と恐怖の象徴です。そこに現れる魔女が模範的な賢人としての側面を持っていては台無しで、それこそ魔女としての風紀を乱すことになるんです! わかりますか!?」
    「よくわかりませんけど、とりあえず一枚」
      (パシャッ)
    「……な、なんで撮るんですか!」
    「これを見たお兄ちゃんがどれくらいの反応を見せるのか、研究しよっかな~って」
    「お、お兄ちゃんって……速瀬慶司……?? ちょ、ちょっと待って……!」
    「大丈夫です! わたし、ちゃんと『これはハロウィンの仮装だから』って付けくわえておきますから!」
    「それならハレンチな恰好でも当たり前ですよね?」
    「この恰好を……速瀬慶司が……見て……反応を…………は、反応!?」
    「……あれ? なにか予想外の反応に……」
    「真っ赤になってきましたよ?」
    「はっ、反応なんて……そのほうがハレンチじゃないですかー!!」
    「ええっ!?」
      (ガラガラ、ピシャッ)
    「……扉を閉じられてしまいましたね」
    「えー……宇佐美沙織、要注意……と」