ここから夏のイノセンス！

「蛍塚姉妹のなぜなに晶生村～！　第３回だよ」

「今回はこちら、晶生川の川原からお届けします…… そう、今回こそはきちんと……横道に逸れずに……」

「姉さん、真面目」

「当然よ。もう３回目なのだから、いい加減本来の趣旨どおりに 進行させなくては申し訳が立たないわ」

「そ、そんなところにあたしお邪魔しちゃっていいのかなぁ？」

「とか唐突に現れる現地の水着ギャル。さあ姉さんはどう対処するのか」

「今回はゲストに鴫原紅緒さんをお招きしています」

「お～、にっこり笑顔で切り抜けた」

「まーあたし誘ったの蛍塚さん本人だしね。 なんであたし誘ったんだろーっていうのは未だによくわかんないけど 誘ってもらえたならとりあえず乗るあたし」

「声をかけたのは、鴫原さんが水着を着けてくれていたからよ」

「あっやっ、あはははっ！　大した身体じゃなくて申し訳ないけど、 弟妹連れて泳ぎに来てたところだったんだよねちょうど。 まーやっぱ暑いしね！　夏だしね！」

「そう！　ユノ、聞いてちょうだい。 地元民の鴫原さんたちがこうして来ているとおり、 ここは絶好の川遊びスポットなのよ！」

「んふ。無事に話がつながった」

「ええ、任せてちょうだい！　予習は万全だわ」

「お～さすが姉さん。それでそれで？」

「これ以上遡ると川幅が狭くなったり、流れが急になったりで泳ぎづらい。 かといってここから下ると、今度は村に近づきすぎて気持ちよく泳げない…… そういう場所なのよね、鴫原さん！」

「そーそー。村の中だと川にアレコレ流したりもしてるしね。 この辺がちょーどいいんだよねっ」

「なるほど～。つまり？」

「ええ！　村を東西に貫いて流れる晶生川は、 このとおり村民のみんなの生活に密着しているの！」

「農業用水、生活水路、そして鴫原さんたちが今こうして来ているように、 涼を取る場所としても――」

「前に由嗣と来たときも？」

「……えっ？」

「密着したりした？」

「そ、そこまでは……していないけれど……」

「もうちょっと詳しく聞きたいな～。そのへん。紅緒にも」

「えっあたし？　く、詳しくってっ――」

「……たとえば。由嗣に、実は性欲があったって分かって」

「は……ハイっ……」

「んふ。つまり、えっちな目で見られるって分かってて、 それでも水着になるって結構勇気いったと思うんだけど……？」

「えっ、やっ、そのっっ」

「そ……そうだったの？　鴫原さん……」

「ほらほら。姉さんもこう言ってることだし、 ここは思い切って答えちゃお？　紅緒」

「おねえちゃん、よくわかんないけどがんばれ～～っ」

「あげく声援が」

「もはや逃げられないあたし！　 わ、分かったっ、端的に申し上げますとですねっっ……！」

「ふんふん。んふふ」

「ごく……ど、どうだったのかしら」

「やっぱりその、最初はすっごくドキドキしたっていうか、恥ずかしくて……」

「でもちょっと嬉しくもあったりで…… 千種くんがあたしのことちゃんと女の子として見てくれてるぅー みたいな……」

「…………」

「なんて！　あははあたしすごい大胆なこと言っちゃってるねっ、 それこそお恥ずかしいねっ、あはははは……！」

「い、いえ、そんなことは……」

「でもって姉さんは？」

「わ……私もすごくドキドキしていたわ。鴫原さんと一緒で……」

「おーっ。やっぱそーだよねたとえ未来の女の子でも！　 やっぱそう見られてると思ったら目覚めちゃうって言うかだよねー！」

「ええ……そういうことなのよね、きっと……あの胸の高鳴りは……」

「つまり女は本来、そういうものなのよね。 未来にいたころには一度も覚えなかった感覚だけれど、 女は男性の視線を意識すると――」

「うんうんっ。少なくともあたしたちの時代の女の子はそーだし！」

「なるほど。つまり姉さんは、由嗣に性的な目で見られて 興奮されてるっていうのが分かってドキドキ女に目覚めてしまったと」

「そ、その言い方はちょっと――」

「ええ。私の身体に性的な意味で興奮するのね、 では私はこれから彼に犯されて妊娠させられてしまうんだわって……」

「そこまでええぇ！？」

「い、いえ、もちろんそんなことはしないって彼は言ってくれたわ！　 だからこれはあくまで私がそう思ってしまったという話で！」

「そもそも勃起してなかったしね、由嗣」

「してたら大変だよ！？」

「ええ。だから私はとても失礼なことを考えてしまっていたというのも 充分に分かっているわ」

「私の意思を無視してそんなことはしないとも、彼はちゃんと言ってくれたし……」

「その上で、改めて私の水着姿を褒めてくれたし」

「お、おおぅ……千種くん紳士だ……さすがだ…… そこまで考えちゃうんだっていう蛍塚さんの話からは なんか逸れて行ってる気がするけど……」

「ま～細かいことは気にせずに。 それで姉さん、由嗣に褒められてどうだったの？」

「ええ……これもきっと女としての感覚なのよね」

「ほら、川遊びの前に、時子さんのお産をお手伝いしたこともあったでしょう？　 だからなおさらに、というのもあるのかしら。 私、改めて思ってしまったの」

「今度は勃起して欲しいわ、って」

「ふが！？　ななななに言ってんの！？　 ぼっ、ぼっぼぼっきっ、ぼっきってっっ」

「だ、だって。勃起した陰茎を膣に挿入して 射精すると受精して赤ちゃんが出来るのでしょう！？　 だったら女としては当然思うわ！　そういうものなのでしょう！？」

「そうだけどもぉー！」

「……つまり姉さんは由嗣の赤ちゃん産んでみたいと」

「私には彼しかいないんだもの……そういうことにはなってしまうわよ」

「ってなんかもうさっきから愛の告白にしか聞こえないよー！？」

「？　いえ、彼ほど深い仲になった男性は他にいないという意味なのだけれど」

「深い仲って！」

「ここに来たばかりのころと比べたら遙かに、 お互い理解し合えていると思うわ。彼と私」

「逆に言えば、彼以外とここまで理解し合えたことはないの。 だから自分も将来赤ちゃんを……と想像するにも、 千種くん以外の相手がパッと出てこないのよ」

「ああそーいう…… いや、そーだとしてもなんでこの人は言葉の使い方がこう…… いや間違ってないんだけどっ、ないんだけどぉっっ」

「うわーん助けて妹さーん！」

「…………」

「あ、あれ？　妹さん？」

「（姉さん、性について意識してくれるようになったのはいいと思うし、 紅緒も狙いどおり姉さんを煽ってくれて二人とも超グッジョブって 感じではあるんだけど……）」

「（なんでだろ。由嗣相手にそういうこと言われると、 ちょっとモヤッて来るの……）」

「ええと……ユノ？　私、なにか間違えていたかしら」

「……時間！」

「あっ。ま、またしても本題から話が逸れてしまっていたわ！」

「ってわけで今回はここまで！　また今度ー！」

「ご、ごめんなさい皆さんっ。 今度こそちゃんと進行させようと思ってはいたのだけれどっ……」